海外送金においては、多くの場合で為替レートに含まれる上乗せレートからくる為替手数料が大きな比率を占めます。これは、実際には負担しているのに、表面的に使われる「送金手数料」には含まれてこないので、とても見えづらいコストと言えます。
そのため、送金手数料をトータルで節約するためには、送金時の両替で使われる為替レートについてきちんと理解しておくことが必要です。
この記事では、「近いうちに海外送金をする予定」という方を対象に、以下のことをご説明します。
本記事の内容
- 海外送金の両替時に使われる為替レートの種類
- FXの取引・両替で使われる為替レートの種類
本記事を書いた人
- 海外永住ビザを取得しての海外移住経験あり
- 移住や投資を通じて「日本⇒海外」の海外送金を経験
- 帰国後は「海外⇒日本」の海外送金を経験
- 仕事上も小さな会社のCFOとして多様な海外送金を経験
この記事を書いているこまちは、海外送金歴かれこれ20年。いろいろな海外送金を体験してきました。
当ウェブマガジンでは、海外送金・外貨両替・国際派のマネーに関する情報を、わかりやすくご紹介しています。
一口に為替レートといっても、実務的にはいくつもの定義が存在します。
ここでは海外送金で使われる為替レートの定義に関して、最低限理解しておきたい内容を見ていきましょう。
*当記事は、データの日付を個別に明記しているものを除いては、2020年8月時点での情報を参考にしています。
銀行・送金サービス・両替で使われる為替レートの種類
銀行や送金サービスを利用して日本から海外へ送金をする際には、
- 日本円を外貨へ両替して送金、あるいは
- 日本円から外貨預金へと移した資金をそのまま送金
することになります。
いずれの場合にも、「日本円⇒外貨」という両替がなされます。
「その際に使われる為替レートは何か?」というのが、ここでのテーマです。
尚、他に日本円のまま送金する円送金があります。その場合は両替は海外の受取銀行で行なわれることになりますが、その際の為替レートについては、当記事では対象外にしています。
TTS
日本円を外貨へ替えるときに、銀行や送金サービス会社が使うレートはTTS(Telegraphic Transfer Selling rate)または対顧客電信売=外貨購入・預入レートと呼ばれます。
この呼び名は、元々は「銀行が顧客に対して外貨を売る(=顧客が円を使って外貨を買う)」というところからきています。
例1
【仲値が1ドル=100円、TTSが1ドル=101円の場合】
顧客は円をドルと交換するために、1万ドルを買うために銀行へ101万円を支払います。
つまり、仲値の1ドル=100円で換算した100万円よりも1万円多い支払いが必要になります。上乗せレートの+1円によって多く支払うことになった金額(この例では1万円)が、為替手数料になります。
この上乗せレートが銀行や送金サービスによって違っているために、それぞれの為替手数料が違ってくるわけです。
多額の送金時とマイナー通貨は特に注意!
- 為替手数料は、一般的には送金資金のなかに含まれて提示されてしまうために、とても見えづらい手数料です。利用するサービスによっては、手数料として明示されるのは狭義の送金手数料だけで、為替手数料は明示されない場合もあります。
- 為替手数料は、その性質上、送金額に比例して大きくなります。そのため、一定額以上の海外送金では、手数料金額としては表面的な送金手数料よりも大きくなる場合が多いので、両替に使われるレートに留意をする必要があります。
- 上乗せレートは、マイナーな通貨で大きくなる傾向にあります。そのため、特にマイナー通貨では送金方法を慎重に選ぶことが大切です。
【1日固定のレートか?リアルタイムレートか?】
多くの銀行では、毎朝決まった時間にその日のレートを決定して、1日の取引では同じレートが使われています。(たとえば、ゆうちょ銀行では、原則として米ドルは午前11時、その他の通貨は正午に変更をしています。)
しかし、窓口では1日固定のレートであっても、銀行によってはインターネットバンキングではリアルタイムレートを使って、その時点(あるいはその時点に近い)為替レートを使って両替される場合もあります。
リアルタイムレートの場合には、その日の為替レートの動きによっては、固定レートより得になる場合も損になる場合もあります。
TTM(仲値)
仲値とは、TTM (Telegraphic Transfer Middle rate)とも呼ばれ、銀行が顧客に対して10万ドル未満の外国為替取引をする際の基準となるレートです。多くの場合、各銀行が毎営業日の朝9時55分ごろの為替レートを参考に決定します。
両替時に仲値で両替されれば、真のレートで両替されるわけですが、海外送金での両替では、仲値で両替されることはほとんどなく、銀行や海外送金サービスの為替手数料が反映された為替レートが使われています。
仲値で両替されて為替手数料なしのおすすめの海外送金方法
上記で説明したように、上乗せレートによる為替手数料は隠れコストとも言われて、利用者にはとても見えづらい手数料となってきました。
そのような隠れコストを排除して、上乗せレートなしの仲値で両替を行ない、手数料はわかりやすく計算された送金手数料としているのが、トランスファーワイズです。
上乗せレートがないことによるメリットは、主要通貨の海外送金コストの比較【50万円送金の場合】で見たように、トランスファーワイズとその他の方法の手数料比較からも理解できますので、参考にしてください。
送金にかかる日数についても、海外送金にかかる日数・時間で見たように、銀行宛ての送金であればトランスファーワイズは一番はやいカテゴリに属しています。「安くて速い」海外送金方法を探している場合には、おすすめの選択肢のひとつです。
トランスファーワイズの特徴については、下記の記事も参考にしてくださいね。
-
【ワイズ(旧トランスファーワイズ)の海外送金】隠れ手数料なしが安心!
続きを見る
TTB
TTB(Telegraphic Transfer Buying rate)とは、 対顧客電信買=外貨売却・払出レートのことで、銀行が顧客から外貨を買う(=顧客が外貨を円に交換する)ときに用いられる為替レートです。
海外から日本へ外貨を送金し、外貨を円へ替えて受取りする場合、このTTSレートが使われることになります。
例2
【仲値が1ドル=100円、TTBが1ドル=99円の場合】
ドルを円へ交換するために、顧客は1万ドルを売って99万円を得ることになります。
つまり、仲値の1ドル=100円で換算した100万円よりも1万円少ない金額しか得られません。為替レートのマイナス1円によって少なくなってしまった金額(この例では1万円)が、為替手数料になります。
為替コストは、よく片道X円、往復Y円といった表現がなされます。
上記(例1)で片道の円⇒ドルの場合、為替レートが+1円となって1万円の為替手数料になっています。
上記(例1&例2)で往復の円⇒ドル⇒円の場合、合わせて2円のレート差にかかる費用として2万円の為替手数料になっています。
つまり、101万円手元にあった円をドルへ交換して1万ドル、その1万ドルを今度は円に戻すと99万円になって、往復で2万円の為替手数料ということになります。
為替レートがそれぞれ違うから賢い選択をしよう
TTM、TTB、TTSは、三菱UFJ銀行と横並びに決めている銀行が多くなってはいますが、銀行により違いがあります。
さらに、同じ銀行でも窓口、電話、インターネットバンキングでは為替レートが違う場合もあります。
海外送金サービスや、海外プリペイドカードにおいても、それぞれが独自の為替レートを設定しています。
使われる為替レートが違えば、同じ資金を海外へ送金する際の手数料が変わり、最終的には「受取人が受け取れる金額」が異なってきます。あるいは、受取人が一定の金額を受け取るのに必要となる「送金人が用意すべき資金」が異なってきます。
それゆえ、表面的な狭義の送金手数料だけではなく、多くの場合で合計のコストに占める割合が高い為替手数料に影響する為替レートの影響を理解し、「どのようなレートが使われているか」を知ったうえで「どの方法で海外送金をするか」を決めることが重要になってくるわけです。
FXの取引・両替で使われる為替レートの種類
【FX口座を利用した両替と海外送金のプロセス】でご紹介しているように、FX取引(外国為替証拠金取引)で使われるFX口座を利用してお得に両替を行なう方法があります。ここでは、その際に使われるレートをご紹介します。
Askレート
外国為替証拠金取引、いわゆるFX取引で使われる為替レートにおいて、顧客が通貨ペアを買う(Ask)ときのレートです。
Bidレート
外国為替証拠金取引、いわゆるFX取引で使われる為替レートにおいて、顧客が通貨ペアを売る(Bid)ときのレートです。
FX取引での為替レートには、以下のような特徴があります。
FX取引での為替レート
- FX取引での為替レートは秒刻みで刻々と変わる
- AskとBidのレートには差であるスプレッドは、銀行での為替レートのTTSとTTBの差よりも桁違いに小さい
この2番目の特徴から、銀行等の上乗せレートと比較して、FX口座での為替レートの上乗せレートは非常に小さくなります。
そのため、FX口座を利用して両替することで為替手数料を節約することが可能になるのです。
海外送金する金額が大きくなると、上乗せレートからくる為替手数料も比例して大きくなってしまい、銀行送金や送金サービスでの手数料節約には限界があります。
特に、投資や留学など数百万~数千万円を銀行の海外送金(両替と送金)で行うと、送金資金のなかに多額の為替手数料が含まれてしまい、気づかないうちにびっくりするくらいの為替手数料を払っていることになりがちです。
大きな金額の海外送金では、両替部分はFX口座を利用するのが合計のコストを抑えるための必須の選択肢ともいえるでしょう。
当サイトのこまちも、海外に不動産を購入するにあたって海外送金が必要となった際に、FX口座を利用して両替しました。口座開設等の手続きが必要となりましたが、そのぶん節約できる金額もかなり大きかったです。
「大きな金額の海外へ送金する」「これから海外に長期で住む」「海外移住を予定している」という場合には、日本でも海外でも使えるFX口座を準備しておくと安心です。
FX口座を利用しての両替については、以下の記事を参考にしてくださいね。
-
【FX口座での両替】多額の海外送金で手数料を節約する方法
続きを見る
まとめ:手数料が反映された為替レートに気を付けよう
為替手数料は金額に比例して増えますので、使われている為替レートを理解することがとても重要です。
海外送金の方法を比較するときには、送金手数料だけでなくて上乗せレートからくる為替手数料も確認して、総額の送金コストで比べるようにしましょう。